教育新聞ニュースD
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100【相談】出会い系サイトが心配 ◆中学1年の男子生徒を持つ父親です。携帯電話の出会い系サイトの内容には目に余るものがあります。確かに通信の秘密も大事だと思いますが、子供のメールの中身を見られるようにしないと、どうしようもない時代。何とかできないでしょうか。自分が女の子の親だったらと思うと、寒気がします。       ―――男性

【回答】教育評論家 尾木直樹 ●ご心配、もっともです。思春期の子を持つ親として当然でしょう。
 昨年実施した日本PTA全国協議会の調査(全国約1万人の小5と中2の児童・生徒、
保護者対象)の結果では、中学生は28・4%が自分で使える「ケータイ」を持ってい
ました。読売新聞社の調査では4割近くに達しています。1か月の平均使用料は小学生
で4052円、中学生では5260円にもなっています。今やルールを守れば持ち込みを許可している公立中学校も珍しくありません。携帯電話は単なる通信手段ではなく、中高生の心を結ぶツールとなっているようです。ですから、いかに危険を防止し、上手に活用するかということを教える必要があるようです。
 「出会い系サイト」ですが、協議会の調査では、中学生の3・1%が利用しているようです。理由は「異性の友人をつくるため」(52・4%)、「興味本位から」(33・3%)となっており、実際に相手と会った中学生も1・2%いました。
 警察庁の調べでは、昨年1−6月までの上半期だけで、「出会い系サイト」絡みで摘発された児童買春事件は400件にも上ったそうです。被害者の8割以上が18歳未満ですから、中学生を持つ親としては心配です。警察庁も、サイトへの書き込み段階で規制したり、「出会い系サイト」へのアクセス自体を禁じるなどの法的規制に乗り出しました。
 しかし、こうした規制頼みではなく、家庭でもしっかり話し合い、ルールを作るなどの対策を練る必要があります。第一の視点は、遠回りのようですが、異性を理解し、尊重する心を養うことでしょう。いかに規制が強化され、親が監視の目を光らせても、後追い指導にしかなりません。高校生の2人に1人は、同世代の少女が金銭目的で性交渉を持つことを容認しているという状況があるからです。このような価値観は問題でしょう。
 生き方としての性教育が充実すれば、「出会い系サイト」にはまっていく心配はまずありません。男の子を持つ親として、ぜひ「性と生」の教育に挑戦して下さい。
99【相談】毎日漠然と過ごす息子 ◆中3の息子は、はっきりした目標も決められず、毎日ただ漠然と過ごしています。成績は5段階評価でほとんどが2。何か嫌なことがあれば必ず熱を出して学校を休み、休も家で寝ているか、ゲームをしています。たまに友達の家に遊びに行くのですが、人付き合いもうまくできないようです。何とか自信を持って、毎日を有意義に過ごしてほしいのです。       ―――男性

【回答】信州大教育学部付属教育実践総合センター助教授 今田里佳 ●お父さんと息子さんの関係はどんなふうでしょうか。「自信を持って有意義に過ごして欲しい」とお父さんが考えていることを、息子さんはご存じですか。お父さんが思っている有意義な状態と、息子さんの有意義な状態に、大きなギャップはありませんか。
 お父さんと息子さんの関係がどのようなものかによって、今後の対応も少し変わってくると思います。どうすることが息子さんにとって一番良いか、ということをお悩みになっているのですから、まずは息子さんに、どんな状態を望んでいるのか聞いてみるのもよいのではないかと思います。そこから解決策が見つかることもあるでしょう。
 親御さんの目からは目標が決められず、漠然と過ごしているように思える状態であっても、もしかしたら、息子さんは毎日、出口の見つからない問題を考え、困っているのかも知れません。お父さんが人生の先輩として、自身の中学生のころのことを思い出しながら関わりを持ってみるのは、悪いことではないと思います。
 成績もあまり良くない、人付き合いも上手ではないというように書いてありますので、たとえ周りの人が「自信を持ちなさい」と言ったところで、息子さんの中に自信が生まれてくるとは思えません。
 人間が、自信を持てるようになるためには、「自分でできた」という成功体験を繰り返していくことが大切だと思います。息子さんが興味のあること、好きなこと、得意なことをやってみて、褒めてもらったり、正当に評価してもらうことが自信につながるはずです。お父さんが一緒になって、そのような体験をさせてみようと考えてみてはいかかででしょうか。
98【相談】学校に行けない男児 ◆体が弱く、甘えん坊の小学3年の長男。「気持ちが悪い、体が痛い」と言う本人の意思で登校するかどうかを選ばせています。「治ったら行こう」と励まし、一緒に登校することもありますが、遅刻が嫌で欠席も多いです。担任からは「体と心のバランスがうまくとれていないのでは」と言われました。学校に行けないことを大げさに言わないようにしていますが、最近は週1回くらいに増えてきました。このままでいいのでしょうか。       ―――埼玉県、女性

【回答】医師 土屋守 ●不登校の典型的なケースですね。特に、学校へ行こうという意思と、この子が言うような「気持ちが悪い、体が痛いから行けない」という現実とのギャップが埋まらないのが、小学校低学年の不登校の圧倒的な現実です。朝の登校時、急に「気持ち悪い」と言いだすのは、高学年にもよくあることです。
 この子の場合、体も弱いようですし、母親の「気持ちが悪いなら仕方がない。治ったら行こう」「励ましてできたら褒めてあげる」「学校に行けないことを大げさに言わない」という指導は的確です。一方、「心と体のバランスが取れていないのでは」という担任の理解も正しく、力強い味方になってくれそうです。またこの子は、将来はともかく、幼さゆえの神経質さから、遅れて母親と行くことに抵抗があり、「欠席した方がまし」と考えるのも理解できます。
 現在、少子化なのに中学校で1日も登校しない子が増え続けていて、この逆行ぶりに行政や学校現場も頭を抱えているのが現実です。しかし、このお子さんのように「気持ちが悪くても学校に行こう」という意志を持っているのは貴重なことです。何と言っても、この子は小学校低学年です。学校へ行けない時は無理をせず、家庭で温かく見守ってあげて下さい。
 不登校で学校へ行けないために、家庭でしか経験できないことを学び、将来の人格を豊かにすることもできます。自分と同じように学校へ行けない子に共感したり、テレビを通じて体の不自由な人やお年寄りの生活を知ったり、日本や世界で今起きている出来事を知ったりし、人格を豊かにする努力もできます。
 人生とは、学校へ行けないことで「真っ暗」になるものではないと、ご家庭でも理解し、母親の的確な指導と担任の立派な理解のもとで、ゆったりとこの子を見守ってあげて下さい。
97【相談】{無表情、無反応の幼児 ◆園児の中に、周囲から語りかけても反応しない無表情の子供が2人います。お母さんからのスキンシップや語りかけ、絵本の読み聞かせが不足しているのかと勝手に想像しています。親に協力を求め、了承を得てからじっくりと粘り強く取り組む必要があると感じますが、具体的な対策が分かりません。       ―――埼玉県、保育所経営、男性

【回答】日本女子大家政学部教授 小川博久 ●相談の対象となっている「無表情」な幼児への対応として、親と話をして協力を仰ぎ、じっくり粘り強く取り組む態度は基本的に正しいと思います。また、無表情の理由として、お母さんとの肌と肌の触れ合いや、語り聞かせ、読み聞かせが足りないというのは、「仮説」としては可能性が高いといえるでしょう。
 ただ、こうした仮説を当然のこととして親と話をすると、説教のようなニュアンスになりがちです。むしろ、親御さんが幼児と向き合って長い時間を過ごす時、幸せ感を感じるかどうか、幼児がかわいくてしようがないと思う時はどんな時か、あるいは幼児と一緒にいる時につらいと思う時はあるかなど、幼児とともに暮らす親の心情を素直に引き出せたらと思うのです。
 親に幸せ感や、かわいいと思う気持ちがあれば、おのずと親子のコミュニケーションは豊かになるはず。ですから、幼児と親とのかかわりとは別に、保育士も園生活の中で無表情な幼児とのかかわりを確立しなければなりません。
 その際、保育士はどうしても幼児の無表情な顔にこだわってしまいます。大人は対人関係で相手の顔を見て対応の仕方を考えるからです。でも、大切なのは体全体の動きです。保育士やほかの子のリズミカルな体の動きに同調するかどうかの方が大事なのです。
 保育士が幼児と手をつないだり、抱っこしてスキップやリズミカルな動きをしたりした時、それに応答する体の動きがあれば無表情は改善する可能性があります。また、保育士がサッカーボールを幼児に転がした時に、そのボールに目をやり、こちらへ転がし返すことが繰り返しできれば、幼児と保育士との応答的関係(コミュニケーション)は成立しているのです。
 あるいは幼児を抱きながら音楽に合わせて体のリズムを取り、そのリズムに合わせて軽く幼児の尻を手でたたきながら、表情の変化に注目してみて下さい。笑顔でも表れたら、心配はいりません。こうした努力を日常的に繰り返し続けてみて下さい。 硬いつぼみが少しずつふくらんで軟らかくなり、笑顔の花を開かせるのを心待ちにしながら、じっくり取り組んでみて下さい
96【相談】母を亡くした男児への対応 ◆言葉と心の発達を目的とした教育教室を主宰しています。ある男児(3歳)は昨年12月に母親を病気で亡くし、今はおばの家族と同居しています。しかし、教室で読み聞かせる絵本には母親との結びつきが出てくるものが多く、そんな内容を聞かせていいのか、ちゅうちょしてしまいます。また、おばに何か伝えられることはないでしょうか。       ―――福岡県、学習塾経営、女性(48)

【回答】白梅学園短期大保育科助教授 師岡章 ●近年、死別や離婚などにより、両親がそろわない状態で育つ子どもが増えてきました。学校や幼稚園、保育所などでも、一昔前はそうしたケースに配慮して母親や父親をテーマにした活動を慎むといった傾向も見られました。
 ただ、最近はそうした配慮も少なくなっているようです。例えば、様々な理由で親が養育できない子どもが入所する児童養護施設でも、母親や父親をテーマにした絵本や紙芝居などをあえて避けることはしないところが増えています。たとえ施設内でそうした話題を避けても、子どもはどこかで触れる。親不在の事実は変わらないだけに、その現実に向き合い、乗り越えてほしいからです。
 そのため、そうしたテーマをタブー視することなく、自然に触れさせているようです。より深刻なケースを抱える施設でさえ、こうした姿勢が見られる昨今、はれものに触るような神経質な対応は逆効果なのかもしれません。
 ただ、子どもの状態によっては一時的にそうした話題を避けることも必要でしょう。また、週1回、短時間だけ通う教室では十分なケアもできないでしょうから、その点を考慮することも大切です。踏み込みすぎる前に、近隣の幼稚園・保育所への入園を勧めるとよいでしょう。発達面で気になるところがあれば、専門機関への相談を促すことも必要です。
 しかし、何より大切なのは、家庭の中で愛情に包まれて暮らすことです。それを気持ちだけでなく、体を通して味わわせることが重要です。実子と区別なく楽しい遊びを共有し、またスキンシップなどの甘えを大切にすることを伝えていきましょう。必ずしも、血のつながりだけが家庭生活の豊かさを保障する時代でもありません。血のつながりがなくても、家族の人々が思いやりを持ってかかわり合えば、真の家庭はできることを伝えていきたいものです。
95【相談】授業を妨害する男の子 ◆英語教室に通ってくる男の子は、いつも授業に参加せず、CDプレーヤーやテレビのコンセントを抜くなどの妨害ばかり。ほかの子に対して暴力も振るいます。二人きりで向き合うと素直だし、毎週来るので教室自体は嫌いではないようです。怒られるのを承知の上で、目立つことをして気を引こうとしたり、構ってほしいのだと思うのですが。       ―――英語講師、女性(24)

【回答】教材・授業開発研究所代表 有田和正 ●ある学習塾に、毎日いたずらばかりして全く勉強しない子どもがいたそうです。担当の先生が厳しく注意しても一向に聞かないので、塾長が「君、高いお金を出して一体何しに来ているのだ」としかったところ、男の子は「念のため」と答えたそうです。保護者が行けというので、「念のため」に塾に行っているのであって、必要性はなかったのです。だから、いたずらばかりしていたのです。お尋ねのお子さんも、ひょっとしたら「念のため」に来ているだけなのかも知れません。
 しかし、いたずらの最大の原因は「授業が面白くない」か、「何をどうしてよいか分からない」といったことでしょう。学校では、授業が面白くないことが大きな原因になっています。この点はどうですか。面白い授業をしていますか。
 こういう子どもは一般的に頭の良い子が多く、授業内容が物足りないことがあります。英語を使った遊びなどを採り入れたり、「これだけは何としても教えたい」という内容を鮮明につかんで、それをいかに面白くするかを考えることが、第一の対策でしょう。
 第二の対策は、授業を進める時、その子に手助けしてもらったり、補助してもらったりすることです。「君だったらここをどう教える」と相談してみるとか、「どんな活動を入れると面白くなるかな」と聞いて彼に「やって見せて」と言うのはどうでしょう。
 目立ちたがり屋の子どもですから、喜んでやると思います。しかるよりも、何かをさせて褒めることです。これが最大の良き指導法でしょう。ご健闘をお祈りします。
94【相談】「お利口さん」の長男 ◆中1の長男は、親友から毎日のように嫌みを言われています。優等生タイプで「お利口さん」の長男にいらいらしたり、しっとしたりしているのではと思います。転勤続きで、人の顔色をうかがうことが多かったのも原因かも知れません。私自身もかなり細かいしつけをしたと反省するほど、しつけ以上の口出しが多かったと思います。たくましく成長してほしいのですが、親として何ができるのでしょうか。  ―――宮城県、主婦

【回答】NPO法人「子どもの研究所」相談員 福島敬三 ●「細かいしつけ」「しつけ以上の口出し」との反省の上で、「親には何ができるのか」との決意に深い敬意を表し、私の考えを申し述べます。
 お子さんは、今まではいわば山に登るのに、抱っこされ、おんぶされ、果てはヘリコプターに乗せられて山頂に降ろされ、それで「山に登った」とするに等しい人生を送っていたと考えられます。従って、真の自分の人生は生きてこなかった、という状況にあります。
 今、降りかかっている問題の克服や解決は、子ども自身の力、自分が考え出した方法による以外はないのだと思って下さい。そのために、まずお母さんは子どもの言うことを聞き取り、その置かれている状態を理解してあげて下さい。ただひたすらに聞いて受容し、十分に支えとなることです。この時、指示めいたことは99%言わない。お子さんと一体となって、その苦悩を共々に苦悩する姿勢、その解決策を考え出す子どもを援助する姿勢に立つのです。
 そのように子どもが努力して成長してくると、助言や指示が必要な場面が出てきます。卵が温められて、その殻を破ってひなが生まれ出ようとする瞬間、母鳥が外からその殻をつつき、ひなが内からつつく。この瞬間を見定める。要するにひたすらに見守り続ける。
 また、このようないじめを題材とする文学作品を見つけてあげる。例えば宮沢賢治の童話「よだかの星」「猫の事務所」などです。いじめに限らず、お母さんが優れた作品を探すのには河合隼雄著「子どもの本を読む」(光村図書)もあります。
 それから、お子さんが自分自身を見つめ、今の苦しみを克服する手だてとして効果的なのは、その苦しみを具体的に文章で表現していくことです。日記でもいいでしょう。今、渦中にある苦しみは書けないので、少し前のことを想起して書き始めるとよいでしょう。場合によっては担任や教育相談係の先生と相談し、力を借りることもできます。
93【相談】カウンセリングが必要か◆情報処理科に通う県立高2年の娘は、昨年から腹痛やおう吐を訴えるようになり、不登校が続いています。希望した学科ではなく、コンピューターマニアのような同級生が多いことも疎外感を深めているようです。家出や喫煙などの問題もあり、今年度から定時制高校に編入しましたが、専門のカウンセリングを受けた方がいいでしょうか。それとも編入を「特効薬」と考え、成り行きに任せるべきでしょうか。       ―――埼玉県、男性

【回答】医師 土屋守 ●登校時の腹痛やおう吐があったというのは、コンピューターマニアの同級生に疎外感があり、「学校に行きたくない」という拒否反応(心因性反応)が表れたのです。娘さんも喜んでいるなら、定時制編入は最善の方法だったと思います。 ただ、定時制に編入することによって、家出や喫煙といった「過去」をどう精算するのか、また娘さんがどうなっていくのか、例えば定時制になじんで新しい友人ができるのか、将来は進学するのか就職するのかなど、どれも決まっていません。過去の清算や未来像を探るためにも、優秀な女性カウンセラーに長期的にカウンセリングを受けることをお勧めします。
 カウンセラーを「女性」に限定したのは、娘さんの悩みを同性として受け止められるからです。家出は社会的に見て危険ですし、ニコチン中毒を起こす喫煙は男女ともに医学的に有害です。特に若い女性が喫煙している場合、将来妊娠してもたばこがやめられない恐れがあり、大変です。
 若い女性の家出や喫煙がどういう意味を持ち、どんなに危険なことか。優秀な女性カウンセラーにかかることは、このようなことを学べる機会ですし、場合によってはカウンセラーから精神科医を紹介してもらうことも、娘さんの説得には有効です。
 編入を「特効薬」とするのでは、今回の一連の経過すべてを未成年の娘さん一人に任せてしまうことになり、無理があります。ぜひ優秀な女性に長期的にカウンセリングしてもらい、ゆっくり時間をかけてカウンセラーと一緒に考え、最後に娘さん自身が積極的に過去を清算し、未来への展望を持てるようにしてあげるのが、親として最善の行動だと思います。
92【相談】教室に入れない娘 ◆中2の娘は人とのかかわり方が下手で、他人の言葉に左右されやすい性格です。不登校になりがちで、出られる教科は二つしかありません。同じような状態の仲良しの女友達に、「登校したら男の子にいじめられるらしい」と言われて不安になったらしいのです。「その子も学校に行けないのに、そんな話を聞けるはずがない」と打ち消したのですが、なかなか学校に戻れません。    ―――愛知県、自営業、女性(38)

【回答】開善塾教育相談研究所主任相談員 藤崎育子 ●「できない自分を許す」「できた方が良いと思うなら努力する」ことが大切、とお母さんから伝えましょう。
 例えば、運動の苦手な子供が、マラソンは苦しいし、足の遅い自分を友達に見られたくないと言って、体育の授業を休み続けたとしましょう。休めば休むほど、できないことはさらにできなくなり、体育のできない自分が嫌で許せなくなっていくでしょう。「できない自分を許す」というのは、人前で自分の弱点をさらけ出し、恥をかくことができる、ということでもあります。
 今は、失敗を恐れずに挑戦することを教える絶好のチャンスです。教室で授業を受ける科目を一つずつ増やしていくのもよいでしょう。挑戦する前に、教科担任の先生と娘さんが一対一で話をするとよいと思います。最初のうちは授業で指名しないという条件を作ってもらうのもよいかも知れません。慣れてきたら指名してもらえばよいのです。後ろのドアの近くに席を置いてもらうと、授業に出やすくなる場合もあります。
 ふとしたきっかけで、また出られなくなるかも知れません。そんな時は焦らずに、もう一度やり直せばいいのです。その繰り返しが娘さんを強くしていってくれるでしょう。 女友達からの影響も、すべてを否定しない方がよいでしょう。友達が失敗したり、頑張ったりする姿を見て、悩んでいるのは自分だけじゃないと思うようになります。親が頼れる良き相談相手になることは大切ですが、友達の役割までも果たしてしまったらどうでしょうか。子供は友達とうまくやっていこうとする努力をやめてしまうかも知れません。
 友達関係や、教室で授業を受けることへの挑戦といった毎日の積み重ねが、娘さんを強くします。粘り強く応援していきましょう。
91【相談】ADHDの疑い ◆家庭教師で担当している小4の男の子は集中して勉強できず、いすにじっと座っていられません。勉強に必要な物もなくしてばかり。大学で学んだADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状が多く見られる気がします。効果的な勉強方法があれば教えて下さい。   ―愛知県、大学2年、女性(19)

【回答】国立精神・神経センター精神保健研究所 児童期精神保健研究室長 田中康雄 ●良き理解者、あるいは良きお姉さんを見つけたこの子は、運が良いと思います。
 ADHDとは、医学的検査では異常が見つかりにくい脳の機能のアンバランスさに基づく発達障害です。診断は、(1)不注意や集中困難(2)多動性・過活動性(3)衝動性といった三つの症状が、7歳までに2か所以上の生活の場所(家庭と学校など)で6か月以上にわたって認められること、と定義されています。
 相談者は医療者ではないので、ここではあくまで「ADHDの疑いのある子ども」として対応すべきですが、こうした課題を持っているのではないかと想定することで、彼の言動が単なるわがままや育ちのせいといった大きな誤解から解放されます。
 注意してほしいのは、症状自体のコントロールよりも、症状から生まれる二次的な問題です。多くは挫折感、無力感、達成感のなさ、褒められた体験の少なさ、叱責(しっせき)や失敗体験から生まれる「自尊感情、あるいは自己評価の低下」です。
 効果的な指導方法を列挙します。短い集中時間で達成感を会得させるよう工夫する。簡単な手順でも紙に書いてから取り組んだり、忘れないようにメモを取ったりする。おしゃべりタイムと集中タイムなど、細かく区切ってメリハリをつける。全てに「良い評価」を与えるため、「良くできたシール」などで評価する。「だめ」という否定的なコメントは控える。その時はできなくても「次は大丈夫」と常に明るく前向きな姿勢を持ち続ける。どうしても注意をしなければならない時は、正しい行動が取れるような諭し方(「〜するな」ではなく「〜をしよう!」といった声かけ)を心がける。
 声かけのポイントは(1)穏やかに(2)相手の目線で(3)笑顔で(4)心に余裕を持って(5)短い言葉で(6)皮肉を交えず(7)目に見える行動を褒めることです。子どもは褒められて育つものです。子どもの成長を信じて対応してあげて下さい。
90【相談】妹をひがむ姉 ◆小学2年の姉が、2歳下の妹をひがんで困っています。「年上だから当たり前」と考え、姉の方をつい厳しくしかってしまうからではないか、と最近思うようになりました。頭では分かっているのですが、疲れている時などはつい強い調子でしかってしまいます。    ―――北海道、主婦(38)

【回答】恵泉女学園大教授 大日向雅美 ●公平に扱わなければいけないと分かっていても、上の子に年齢以上の期待をかけて厳しくしてしまったり、反対に下の子を甘やかしてしまったりということはよくあることです。
 子どもたちを同じように愛するのはなかなか難しく、別の態度になりがちです。忙しさに紛れて気づかない親が多いのですが、相談者は上の娘さんがひがみっぽくなっている原因が自分の接し方にあると気づいています。
 でも、ご自分を責める必要はありません。解決のヒントは子どもの微妙な心理を理解してあげることです。つまり、子どもは必ずしも親から「平等に愛されたい」と願っている訳ではないということです。
 むしろ、「特別に愛されたい」という気持ちを心のどこかに秘めているのです。「お母さんは妹よりも自分のことを大切に思っている」という確証が欲しいだけなのです。その確証が得られると、安心して妹に優しくできるようになります。
 時には上の娘さんだけを連れて外出したり、二人だけで一緒に過ごす時間を作って、その時は精いっぱい、あなたのことを大事に思っているという気持ちを伝えてあげてください。もちろん、下の妹さんにも同じような時間が必要です。
 時折こうした配慮をしていれば、あとは姉妹でけんかをしても見守っていて大丈夫です。子どもに対する親の対応には、例えていえば、会社の社長や人事部長のような配慮が求められるのだと思います。
89【相談】嫌われ者の中2 ◆中学3年になる友人の娘は、周りの人の気持ちに関係なく我を通すので、友人関係がうまくいきません。幼いころから祖父母に甘やかされ、中1の時に両親が離婚するなどしたため、精神的に不安定なのかも知れません。学校でも誰も相手にしなくなり、中2の3学期から不登校状態です。―岩手県、女性

【回答】月刊教育誌「ニコラ」編集発行人 馬場章 ●大変難しいケースで、限られた字数では十分回答できないところがあります。人は変わろうと思えば変わりうる可能性を持つ存在です。しかし、長年の生活習慣の中で形成された性格を一朝一夕に変えることは難しいものです。
 ただ、それを子ども本人のせいにしても何の解決にもなりません。その子は小さいころから選択の余地なく、そういう育ちを強いられてきた面が強いからです。自己中心的なあり方も、自己防衛本能から来ているのかもしれません。人の温かみをあまり知ることなく育ってきたのではないでしょうか。多少開き直りの部分があるとしても、やはり内面は孤独で寂しいものだと思います。
 そういう子どもを同年代の子どもが受けとめるのは、とても荷が重いことです。排除する気持ちはなくても、離れていよう、かかわらないでおこう、となってしまいます。そこで、それを理解して受けとめる大人の存在がどうしても必要ですが、これもなかなか難しいことです。時には自分もまた傷つくことを覚悟しなければなりません。また、大人の期待に沿わせようとすることは、逆にこの子を追い詰めることにもなりかねません。
 見方を変えれば、この子は母親の生き方と同じように、必ずしも規格に当てはまらない生き方を貫くたくましさを持っているとも言えます。むしろ、生きていく中であっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながら、時には痛い目にも遭い、また時には人の情にも触れながら、体験を通して人としてのあり方を学んでいくタイプのようにも思えます。 その意味で、周囲の人の不断の温かいかかわりはとても大切です。事情に通じたあなたのような人がそばにいることは貴重です。「性根を直す」というようなかかわりではなく、凍りついた「我」をどうしたら氷解させられるか。人の心の温かさに一つずつ気づかせていくかかわりをしてほしいと思います。
88【相談】男児の挑発的な態度 ◆花壇に入ったり、部屋の中で物を投げ合ったり、いつも問題を起こす学童保育の小学4年の男児。声をかけても「うるせえ」「邪魔なんだよ」と反感をあらわにします。先日、投げた物が当たったので強くしかったところ、「あーごめんなさい、ごめんなさい」とふざけた様子で言いました。感情的になってはいけないと思うのですが、挑発的な態度にいちいち腹が立ってしまいます。――東京都、学童保育指導員、女性(26)

【回答】教育評論家 尾木直樹 ●相談の文章を読んでいると、小4のその子が目の前にいるようです。本当に、こんなタイプの子っているものです。ところで、こんな子の心理ってどうなっているのか考えたことはありませんか。現象に振り回され、キレそうになるのではなく、一度彼の心の世界に入ってみませんか。
 実は、このようなタイプの子は年齢に関係なく「寂しさ」の固まりです。愛情不足といってもいいでしょう。
 まず、彼の家庭に目をやって下さい。必ず何らかの問題を抱えているはずです。両親の仲が悪かったり、お母さんが仕事に追われていたり。また、親が下の弟や妹の世話に気をとられ、小4の男児になかなか手が回らないとか、この子が下の弟や妹の面倒や家事を任されているとか、ひどいケースでは親から虐待を受けていることもあります。いずれにしてもキーワードは「愛情不足」です。
 本来ならもっと建設的で、気分のよい他者とのかかわりを持つのが常識です。ところが、彼の場合、悪さをしたり、人の嫌がる行動をしたりすることによって、他者とのかかわりをつくり出しているのです。それが最も簡単で分かりやすいからで、しかるという形でも、自分の方を向いてくれる学童保育の指導員さんがうれしいのです。
 このような「寂しさ」「愛情不足」からくる問題行動は、幼児も思春期も共通しています。ぜひ、しっかりこの子を受けとめ、気長に大らかにかかわって下さい。こうした行動は数か月で潮が引くようになくなるはずです。
 老婆心ながら、お母さんとの話し合いで大切なのは母親を責めないこと。指導員はお母さんの味方であることをしっかり伝えることです。すでにあちこちから何回も指摘され、お母さん自身が一番つらく、困っているはずですから。
87【相談】5歳の二男のしつけ ◆7歳の長男、5歳の二男、昨年生まれた長女がいます。幼稚園児の二男は朝、ご飯をなかなか食べず、着替えもしません。とても頑固で、無理やり着替えさせようとすると暴れたりするため、ついたたいたり、どなったりしてしまいます。幼稚園でも集団生活が苦手で、かんしゃくがひどく、手がつけられないと言われます。長男は聞き分けがいいのですが。       ―――福島県、主婦(37)

【回答】白梅学園短期大保育科助教授 師岡章 ●兄弟であっても、対応に苦慮する子とそうでない子がいます。そんな時、私たちは子どもがそれぞれ個性を持った独立の存在であることに気づかされます。決して育て方だけの問題ではありません。自信を持ちましょう。
 そこで、お兄ちゃんとの比較ではなく、二男の立場で改めて考えてみると、充実しきれていない現状が見えてきます。例えば、昨年生まれた妹の存在。自分もかわいがってあげるものの、やはり寂しさはあるでしょう。生まれて5年近くも末っ子であったことを考えれば、なおさらかも知れません。また、幼稚園で要求される集団行動になじめず、先生からもしかられていれば、「行きたくない」という気持ちも分からないではありません。そのうえ両親からもしかられては、八方ふさがりとなり、かんしゃくを起こしたくもなるでしょう。
 それだけに家庭でも幼稚園でも、気持ちを認められたり、褒められたりする体験が必要です。お母さんとの関係では、時にスキンシップなど甘えさせることも大切です。休みの日には、お父さんと一緒に体を動かす遊びを楽しむのも良いでしょう。こうした触れ合いが、かたくなになっている心を癒やすはずです。
 幼稚園の先生にも二男の心の揺れを理解していただき、楽しい体験を増やしてもらいましょう。それをお母さんが受け止めて家でも再現すれば、「この続きを幼稚園でもやりたい」という気持ちも芽生えてくるはずです。意欲が高まれば、少しずつ自分から着替えて準備もするようになるでしょう。
 とはいえ、もともとお兄ちゃん以上に意志の強さを個性として持っている子です。今後も注意すべき時はあるはずです。感情的ではなく、言葉できちんと分かるように教えてあげて下さい。同時に良いところも見つけ、注意した以上に褒めていきましょう。時間はかかっても、メリハリのある対応がいずれ二男の変化を促すはずです。
86【相談】勉強する気にさせるには ◆中1の息子があまり勉強しないので困っています。心根が優しいマイペースな子で、10分くらいで宿題を済ませ、「やるべきことはやった」と言うのですが、テストのたびに成績が少しずつ落ちています。時々声をかけたり、父親からも勉強の必要性を話してもらうのですが、口うるさいとしか感じていないようです。       ―――茨城県、主婦(41)

【回答】埼玉県退職校長会幹事 清水章夫 ●あなたの息子さんは、両親の豊かな愛情に包まれて、とても健やかに成長していますね。
 勉強時間のことですが、ここ数年をみても小・中・高校生が家庭で勉強をする時間が少なくなり、授業の理解度も学年が高くなるにつれて低くなっています。学校での授業時間や学習内容も減り、学力の低下が心配されています。息子さんが勉強しないというのは、中学生の一般的傾向といえます。
 いま学校では、基礎・基本の確実な習得のため、宿題を適切に与えて家庭学習を充実させようと真剣に考えています。そこで、家庭では、成績の順位を問題にするのではなく、本人の良いところを伸ばし、自分で学び考える力を身につける援助をしていくことです。特に男の子の場合、中1から中2にかけては大変な心と体の変化の時期。急に寡黙になったり自己主張が強くなったりするのは、どの子も通過する思春期のトンネルなのです。
 当然、勉強への姿勢も小学校時代とは変わり、勉強は大切だと思っていても、親に言われると反発したり無関心を装ったりします。こういう時こそ親の出番です。あなたの家庭のように、勉強の必要性を優しく根気強く話し合う時間を作り、長所を褒めて励ますことがとても大切なのです。
 また、この時期は進路を自分で決められる力をはぐくむことです。いろいろな体験を積み、何がしたいか、どんな大人になりたいかを考えて、はっきりした目標を持てば、自分が選んだ道に向かって真剣に勉強に取り組めるはずです。
 さらに、両親が子供と共に学ぶ姿勢を大切にしたいものです。子は親の背中を見て学びます。疾風怒とうといわれる時期です。信じ、焦らず、長い目で繰り返し親の願いを伝えることが、何よりの動機づけとなるのです。
85【相談】リーダーの扱い方 ◆4年生の音楽、図工、体育の時間講師です。教えている学級に、運動も勉強もよくできる「リーダー」がいます。音楽の時間はその子が大きな声で歌わないと全体も沈みがちになるし、良くできた子を褒めても、リーダーが拍手しないと皆も認めようとしません。担任はその子のリーダーシップを褒めていますが、学級全体がびくびくしています。      ―――山梨県、非常勤講師、女性(33)

【回答】 教材・授業開発研究所代表 有田和正 ●相談に出てくるような子どもは時々います。昔はとても多かったのですが、今は珍しくなりました。逆にリーダーが育ちにくいことが問題になっているくらいです。
 この子の扱い、指導については三つの方法が考えられます。 一つは、この子とよく話し合うことです。「先生はあなたの実力を認めています。とてもよくできて意欲的です。それでお願いがあるんだけど、ここというところで君の出番を作るので、それまでほかの子の考えをよく聞いて、先生が合図をしたら君の考えを言うようにしてくれないか。そうした方が君の意見も今まで以上に生きるし、ほかの子も君をより尊敬するようになると思うんだけど」と話してみることです。この方法で何度か成功した経験を持っています。子どもは、先生に信頼されていると思えば聞き入れてくれるものです。
 二つ目の方法は、職員会議に出して、みんなで方針を確認し、一貫した方法で指導に当たるようにすることです。ところが、担任はこのリーダーをうまく使っているようなので、「問題児」扱いされることを好まないのではないかと思われます。担任というのは、自分の学級の子どもにクレームをつけられるのをとても嫌う傾向があります。まして、職員会議にかけられたりすると、担任の責任のようになり、面倒になる可能性もあります。
 三つ目として、担任にそっと相談してみるのも一つの方法です。これが案外うまくいくかも知れません。いずれにしても、担任の人柄次第です。お願いという形を取った方がいいと思います。
84【相談】バスケ部でのいじめ ◆バスケ部の1年先輩に、パスが取れなかったりしただけで「死ね」などと言われます。顧問の先生がいない時はいじめがひどくなり、わざとボールをぶつけられたりします。先生には心配をかけたくないのですが、どうすればいいでしょうか。       ―――中1、女子
【回答】つくば子どもと教育相談センター代表 志賀伸三郎 ● まず、改善の方法は必ず見つかるということを信じて下さい。
 先生に心配をかけたくないという気持ちはよく分かります。いわれもない「いじめ」を受けて苦しんでいる中学生の多くは、誰にも相談しません。その理由は、「仕返しがひどくなるのではないかと思って相談したくてもできない」からです。相談することで、「弱虫」「いじめられっ子」と見られるのも、自分にとって許し難いことの一つです。
 しかし、今大切なのは、勇気を持って親しい友達や信頼できる先生に相談することだと思います。一人でじっと我慢したり、黙って耐えたりすることは何の解決にもなりません。
 いじめは、「あなたと先輩との関係」「いじめを黙って見ている多くの生徒たちとの関係」など、一つひとつの関係をしっかりとらえ、時間をかけて解決しなければなりません。その時に多くの生徒やいろんな先生、親が解決にかかわることによって、あなたのつらさや、なぜ先輩がいじめたのか、ほかの生徒がなぜ見過ごしたのかなど、いじめの全体像がはっきりします。
 全体像がはっきりすれば、どのような解決法が可能なのかが、みんなのものになっていきます。そのような方法ではなく、先生が先輩を呼んで「もういじめはよせ」と説教じみたことをして解決しようとすれば、あなたが恐れているように、いじめはもっとひどくなることもあります。
 どうか自分を信じて、いじめに「ノー」と言う自己主張を持つこと。そして、部活やクラスの友人にこのことを話し、部活の顧問の先生や担任に勇気を持って相談することをお勧めします。道は必ず開けるのではないかと思います。

83【相談】引きこもりがちな妹 ◆高校時代に引きこもり、今も通院している妹。「自立したい」と実家を離れて大学に通っていますが、毎日の生活が大変らしく、「大学をやめて家でじっとしていたい」とこぼすようになりました。今やめてしまうと自信をなくし、再び引きこもってしまわないかと心配です。家族はどう支援をすればいいでしょうか。       ―――愛知県、大学生、女性(21)
【回答】精神科医 和田秀樹 ●原則的に言えば、主治医の先生としっかり話し合いの時間を取ってもらって、どのような診断で、どのような治療方針かを聞いた上で、家族としてどうすべきかを尋ねてみることだと思います。
 本当にうつ病だった場合、励ますことが患者さんのプレッシャーになり、かえって具合が悪くなることがあるなど、周囲の接し方が病状にいろいろと影響を与えることが少なくないのです。専門家や特に患者さんと実際にかかわっている主治医の考え方を聞くことは非常に意味があります。何らかの遠慮があるのかも知れませんが、そこを聞いていないのであれば、患者さんを診ていない私に相談の手紙を書くより、主治医とアポイントを取るほうが先決だと思います。
 ただ、それが必ずしも解決にならないのも事実です。というのは、日本の精神科のクリニックはどこも忙しく、十分なカウンセリングの時間が取れないこともあります。うつ病でなく、引きこもりなのであれば、薬は副次的なもので、本来はきちんとしたカウンセリングが必要でしょうから、医者の側も理想的な治療ができず、納得のできる方針が打ち出せていないのかも知れません。また、生物学的なうつ病と違い、引きこもりの場合は治療方針がまちまちなので、現在の治療が合っているとは限らないのです。 だとすると、家族としては、医者にやってはいけないということを聞いた上であれこれ試してみるしかないでしょう。
 何らかのサークルに入れてみる。自然に触れさせる。面白そうなアルバイトを紹介する。幼なじみなどを含め、友人関係の再構築を試みる。異性を紹介する。スポーツを始めさせる。何が有効かはやってみないと分かりません。何もうまくいかなくても、いつかはうまくいくかも知れないと信じるしかありません。別の医者に診てもらうのも、そういう試行の一つなのです。

82【相談】パソコンに夢中の長男 ◆中2の長男はパソコンに夢中で、学校や塾をさぼって朝から晩までゲームとチャットばかりです。「勉強はしっかりやる」「試験前はやらない」などと決めても、すぐ約束を破ります。注意すると暴言を吐き、母親の私を無視したり脅したり。何を考えているのかさっぱり分かりません。       ―――女性

【回答】信州大教育学部付属教育実践総合センター助教授 今田里佳 ●中学2年生くらいになると特に男の子は反抗期に入り、母親とのかかわり方が今までとは大きく変わってきます。お母さんは何が起こっているのか分からなくなり、心配も大きいと思います。
 今までは親の言うことを素直に聞いて従っていた子供も、自分の世界を持つようになります。干渉を嫌い、その世界に侵入しようとするものに対し、威嚇や攻撃をして守ろうとする、ということが考えられます。親に頼りきっていた子供が、自立するために自分の世界を築きつつある時期とも考えられ、甘えて頼りたい気持ちと、自分でしっかりやりたい気持ち、うまくやりたいけれど思ったようにできないもどかしい思いなどが交錯しているのではないでしょうか。理想的な約束事を自分で納得して決めても、完全には守れないことは往々にしてあることのように思います。
 こうした状態の時、できないことだけを攻められると、さらに反発を強めてしまうことが考えられます。親の思いを押し付けすぎるよりは、本人の気持ちをある程度尊重し、静観することも、自立性を養う上では大事でしょう。
 これがごく一般的な中学2年の男の子の状態であるということを前提に、相談の内容を考えてみます。学校や塾をさぼってまで夢中でゲームやチャットを続けているということですが、それは1日何時間ですか。パソコンに向かっている時以外の息子さんとお母さんや家族との関係は、どのような感じでしょうか。あまりにも一般的な状態とはかけ離れていると感じるのであれば、詳しくやり取りをして対応を考える必要があり、近くの教育相談機関などに相談することをお勧めします
81【相談】不登校の高1への対処法 ◆結婚を前提に、夫を亡くした2児の母親と交際しています。私も妻を亡くしました。相手の高校1年の長女は不登校で、昼夜逆転の生活。勉強は全くしません。私への態度も儀礼的で、遠くから観察している様子です。医師でもある母親は病気の長男を抱えながら、3人のお手伝いさんを雇って孤軍奮闘しています。    ―――男性(57)

【回答】開善塾教育相談研究所主任相談員 藤崎育子 ●親からすれば、娘の高校卒業を考えるのが当然でしょう。しかし、中学時代をうまく送れなかった彼女にとって、高校生活は負担の大きいものだったかも知れません。闘病中の弟や医師の母親に引きかえ、高校に行けなくなった彼女は自分に対して自信をなくしてしまったのではないでしょうか。
 気になるのは家の中の様子です。長男の病気のこともあってお手伝いさんを雇っているのだと思いますが、結果として長女の生活を「勉強さえすればそれ以外は何もしなくていい」というものにしていないでしょうか。
 そこで、まずは彼女が家族の一員として役割を果たせるように工夫してみてはいかがでしょうか。例えば、最初は短時間でも彼女に留守番を頼み、それに対して「あなたのおかげで助かる」と感謝の気持ちを伝えるのです。
 家で弟とただ一緒にいる留守番から、徐々に掃除や料理が加われば、彼女にも母親を助けている実感が生まれてくるでしょう。生活に張り合いが出てくれば自信もつき、高校に再挑戦したいと思うようになるかも知れません。
 彼女と一緒に料理を作ってみてはいかがでしょうか。彼女が乗ってくれなかったら、3人のために食事を作ってあげるのもよいでしょう。儀礼的で観察しているような態度は、ひょっとすればお互い様かも知れません。
 焦らずに堂々と彼女に話しかけてみましょう。映画やテレビなど、話題は何でもよいのです。素っ気なくてもがっかりしないで下さい。お母さんが好きになった人です。子供もいつかきっと認めるようになります。頑張る母親をしっかりと支えてあげて下さい。


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