教育新聞ニュースB
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60【相談】不登校になった長男 ◆中学2年の長男は、小学生のころは何でも積極的で、少年サッカーチームでゴールキーパーをやっていました。中学もサッカー部でしたが、おとなしいからか、次第にチーム内で浮いた存在になり、1年の後半で退部しました。その後は勉強にも身が入らず、学校に行くのも不定期。今は、定期試験は受けていますが、終われば不登校に戻ります。家庭教師に週1回来てもらい、学力的には問題ないようですが、出席日数がどう受験に影響するか心配です。       ―――北海道、学校事務員、男性(47)

【回答】札幌自由が丘学園代表 亀貝一義 ●一般に、子どもは小学校から中学校の時代にかけて大きく成長します。子どもから大人の世界、「青春期」に入るのです。古人は「第一の誕生」とも呼んでいます。子どもたちは次のステージをそれぞれ用意し、大人はそれを時に支えてあげます。
 サッカー部の退部を余儀なくされた理由は、多分性格だけではなかったと思いますが、要するにそのスポーツをやり続けることをやめたのですね。今までの自分なりの自信が崩れたという状態だったのだろうと思います。それも青春期よくあること。問題は、その「自分の第一のテーマ」が何に変わるかをつかみきれていないことです。
 もし、「勉強=高校進学」なら当面の生きがいにはなるのでしょうが、お子さんはそういう単純な転換を良しとしないようですね。家庭教師とともに学習し続けるなら、その意志を尊重し、激励することです。あとは「なるようになる」という達観が必要ではないでしょうか。
 差し当たり、「学校に行かなくても勉強はできるのだ」という気持ちを持たせることです。学校に行かない、だから自分の未来はダメだと考えるのが一番悪いと思います。欠席数が増えると高校進学に影響が出るのは避けられませんが、最近は中学の欠席数をそれほど問題にしない高校も増えてきました。
 中学時代から高校時代はちょうど青春中期。子どもたちは“飛躍”します。中学時代の弱さを完全に克服する人もいます。もちろん引きずる人もいますからこれも一概には言えませんが、いずれにせよ親があれこれ悩まず、父親は父親らしく(これも変な言葉ですが、今は「父親らしくあれ」は有効です)「人生いろいろ」と言ってやった方がいいのではないでしょうか。

59【相談】小学校の学級崩壊 ◆小学6年の子供の学級が崩壊し、担任は夏休みから体調を崩して休養中。これまでに5回、担任が代わりました。裏では悪質ないじめもあるようです。掃除もまともにできず、学校側は「清掃ボランティアの募集」を校長名で保護者に呼びかけましたが、合点がいきません。6年生の乱れはひどく、統率が取れない状態のようです。先日のミニ集会でも、学校の対応に疑問を持つ意見や、説明を求める声が相次ぎました。小さな学校なのに、掃除さえバラバラという状況が信じられません。       ―――千葉県、主婦(35)
【回答】大阪大学大学院人間科学研究科教育環境学講座、放送大学客員教授 秦政春
●率直に言ってかなり深刻な事態です。一般に「学級崩壊」と呼ばれる現象にも様々ありますが、これはかなり厳しい状態だと思います。学校の校長や教頭といった管理職は一体今まで何をしてきたのだろうと疑問を持たざるを得ません。恐らく当初の担任が休み、次々と担任が代わっても、一向に事態は改善しなかったのだろうと思います。
 文面にもあるように「清掃ボランティア」に関しては、もはやどうでもいいことです。それよりも、担任が次々と代わっても事態が改善されないクラスを、今後どうしていくかが問題です。質問だけでは、管理職がどう考えているのかが全く分かりません。
 ミニ集会のようなものは開かれているようですが、そんな集会ではなく、校長・教頭、全教職員、そして保護者が一堂に会し、今後の学校側の方針を確認するとともに、保護者として協力できることは協力していくという「連携」をとることが特に必要だと考えられます。保護者の立場からすれば、そうした会合を持つことを学校側に要求すべきだと思います。
 この種の問題は、ほかの学年にも影響が及んでいく可能性もあります。小規模校ということですから、全体的な会合が望まれます。必要であれば保護者も6年生の授業中にクラスに入るとか、いじめを監視するといったことも必要かも知れません。大切な時期ですし、早急に行動を開始してほしいと思います。

58【相談】ぼんやりしている小5 ◆共同生活施設に入所している小5男子は、終始ぼんやりしています。学校帰りに道路脇にとめてある車にぶつかったり、大声で何度か呼ばないと返事が返ってこなかったり。食事中の会話もテンポがずれている感じです。5年生ともなると、周りの状況をつかんで判断すべきではと思うのですが、その判断力がないようです。保護者も、その点を改善させようとして入所させたそうです。どう指導すればいいでしょうか。       ―――京都府、施設指導員、女性(26)
【回答】●諸症状のうち、とめてある車にぶつかることが病的な範囲に入るのか、小児神経内科医に診断してもらう必要はあります。しかし、私は精神科医として多くの子供を診ていて、相談者の「5年生ともなると周りの状況をつかんで判断すべきだ」という考えには異論があります。
 今の子供が精神的にひどく幼稚だとも思いませんし、「終始ぼんやりしているから問題だ」とは決めつけない方がよいです。反対に終始せかせかとしている子供は、放置すれば「せかせか人間」、強迫的な大人を将来作り出す可能性があります。返事が一度で返ってこないのは、この年齢ではよく見られる現象で、成長とともに常識を身につけていきます。強迫的でなくのんびりしていて、かえって望ましい子供像です。
 時代は我々の予想よりはるかに激しく動いています。考えなくてならないのは、大人が「こうあって欲しい」と願う子供像が、本当に正しく将来性のある子供であるか、ということです。そうでないことを日ごろの診療から痛感するからです。
 現代の日本は子供に魅力ある国でなくなっています。例えば、店の経済が苦しいと「お客様に好印象を与えるためにできるだけ明るく」などと個性を無視した号令が出されます。世の中は明るい人ばかりで構成されていないのに、画一的な価値基準の人間像を店の繁栄のために押しつけるのは人権無視です。その結果、明るくはないがまじめな人は自分を卑下し、果ては他人の自分への評価ばかり気にする「対人恐怖的発想」の大量生産が起きてしまいます。
 いずれにせよ、この年ごろの子供の個性や将来を客観的に見通して、どう尊重するかにかかっています。大人の目は必ずしも正しくなく、身勝手な期待を子供に押しつけるのは禁物です。その時々の子供をしっかり見ていくことが大切です
57【相談】嫌いな友人との付き合い方 ◆一人っ子で公立小5年の長男は、同級生の男子を嫌っています。その子は悪い子ではないのですが、授業中に大声を出したり、ランドセルを一日中床に投げ捨てておいたり、授業妨害や悪ふざけをするようです。長男は直接注意する勇気も腕っぷしもなく、かといって知らん顔するのも不愉快な様子。無視するように言い聞かせてきましたが、新学期の席替えでその子のそばに決まり、ショックのせいか翌日は腹痛で欠席しました。そんな小さな「嫌なこと」を乗り越えられる、心のたくましい子にするために、親はどのように導けばいいのでしょうか。      ―――千葉県、自営業、女性(40)

【回答】信州大教育学部付属教育実践総合センター助教授 今田里佳 ●新学期の席替えの翌日に腹痛で欠席したということですが、腹痛の原因は本当にその子の席が近くになってしまったからなのでしょうか? その後も学校へ行けないような状態なのでしょうか? それとも1日だけの腹痛でしょうか?
 新学期は子どもたちにとって、長い休みを気ままに過ごした後で規律のある生活に戻らなければならず、負担のかかる時期です。体調を崩すことも多いような気がします。相談からは事実関係がはっきりとはわかりません。子どもの場合、お母さんが心配するように、「嫌なこと」があって自分で対応できない状態になると、頭痛や腹痛などの身体症状が現れることも確かにあると思います。
 ただ、腹痛の原因が何であれ、そのような場合には親が話をする時間をとって、何か学校で困ったことがあるのかなど、子どもを責めることなくゆっくり話を聴いてあげるとよいと思います。楽しいことやうれしいこと、うまくいくことだけでなく、「嫌なこと」「苦手なこと」があっても不思議じゃないということが伝わるとよいと思います。 嫌なことは無視するようにというメッセージが、親から繰り返し子に伝えられると、子は「嫌だ」とか「嫌い」と言う感情をうまく扱うことができず、嫌な思いをさせる相手に「やめてほしい」とはっきり言えなくなり、身体症状であらわすしかなくなってしまうこともあります。
 子どもが嫌なことや苦手なことを話してくれるようであれば、「こうしなさい」と話すのではなく、「お母さんが子どものとき、こんな嫌なことがあったけど、こんなふうにしたらなくなったよ」とか、「こんなとき、お母さんはこんなふうにしてみるけど」という例え話をしてあげることも、適切な対処法を教える意味で効果があると思います。
56【相談】不登校児の高校進学 ◆不登校の生徒を訪問して話し相手になったり、一緒に遊んだりする学生ボランティアの活動に参加しています。担当のA君は中3男子。中1の時、不登校になりました。部活をやりたいから高校に行きたいというのですが、学力は数学が中1程度、ほかの教科は小学生程度です。ただきっかけがないだけで、やる気はあるし、A君にとっては今が一番重要だと思うのですが、一緒に訪問する相談員(教員OB)や親は世間話ばかり。「どうせ高校に行けない」と考えているように思えてなりません。力になりたいのですが、どうすればいいでしょうか。  ―――愛知県、大学生、男性(21)
 
【回答】開善塾教育相談研究所主任相談員 藤崎育子●不登校の生徒を受け入れている私立高校が増えつつあります。県によっては公立でも別枠で受け入れ、全日制以外にも、定時制、単位制、通信制といった様々なタイプの高校で不登校生徒の受け入れが進んでいます。
 学力については、「学校に来てくれさえすれば勉強の方は何とかなるものだ」と考える高校の先生方が少なくないようです。私の経験でも、訪問相談の傍ら中3の3学期にアルファベットから教えた生徒が、高校で米国への交換留学生として派遣された例もあります。学力の問題よりも、入学したもののクラスになじめない、友達とうまく付き合えないといったことで高校に行けなくなるケースが多いようです。
 不登校だった生徒は、高校生になったら今度こそやり直すのだ、失敗してはいけないのだと思うあまり、緊張してしまう場面も見られます。A君の場合も、最初から部活と校の勉強を両立させるのは難しいかも知れません。「部活をやるかどうかは入学してから決めるといい」くらいに考えて、志望校を選ぶと良いかも知れません。
 一度、相談員と今後のA君の指導方針についてじっくり話してみてはどうでしょうか。相談員と一緒に保健室登校ができるかも知れません。「高校に行くためにも出席日数を稼ごう」と言うと、動ける子は案外多いようです。それができなければ、冬休みに学校に遊びに行ってみるのも良いでしょう。登校練習にもなります。
 もし、相談員がA君の高校進学を無理だと決めつけ、何の働きかけもしなかった場合は、県教委、あなたの担当教授などにも相談してみて下さい。あなたの言う通り、不登校の子供たちはなかなかきっかけがつかめずに苦しんでいます。そして、休み過ぎてしまったことが、新たな問題の理由となっていくことが多いのです。
5【相談】勉強の成果が上がらない◆中2の娘は成績が思わしくありません。分からないところを先生に聞きに行き、最近は意欲も出てきたのですが、結果と結びつかないのです。頑張っても成果が上がらないのでは、本人も自信をなくし、ますます良くない気がします。塾は小5から通っており、現在は週3日。ほかに英会話の塾にも行っています。受験を来年に控え、今のうちに軌道修正してあげたいです。 ―――大阪府、主婦(42)

【回答】教材・授業開発研究所代表 有田和正 ●まじめに長時間勉強すれば成果が上がる、とは限りません。勉強のやり方が問題です。勉強の成果が上がるポイントをいくつか書き上げてみます。
 第1のポイントは、学校の授業時間にきちんと理解しようと努めることです。分からないときは、すぐその場で質問する勇気を持つことです。「後で」はだめです。
 第2は、必ず「復習」することです。すると、分かっていると思っていたことが分かっていなかったとか、大切な点は何かということが分かります。それをきちんと理解することです。短時間でも復習するとよいです。
 第3は、学習塾を有効に使うことです。せっかく週に3回も行っているのだから、「ここが分からないので教えてほしい」とはっきり言うことです。そして、正確に理解することです。そのための塾ですから。これをしなければ学校と全く同じで、分からないままになってしまいます。
 第4は、短時間でよいから「予習」することです。教科書を読んで、「分からないところ」「分かりにくいところ」をはっきりさせておき、そこを授業中にしっかり聞いたり、尋ねたりすることです。
 第5は、一番得意な教科にまず力を入れて勉強し、少しでも自信を持つことです。「自信」ほど力強いものはないのですから。
 第6は、「意欲」を出すことです。自信が少しついてくると意欲が出てきます。「資質×環境×意欲=能力」という公式があります。資質や環境を変えることは難しいですが、意欲は本人次第でいくらでも大きくしたり小さくしたりできます。公式はかけ算ですから、意欲が大きくなると能力も大きくなります。
 第7は、保護者は「頑張れ」ではなく、少しでも頑張った時に「頑張ったね」と褒めることです。
54【相談】近所の子への指導 ◆小学5年、2年の姉妹の母。小さなこととは思いますが、どうしても気になったことがあります。二女が犬に「お座り」と話しかけていたら、近所の勝ち気な上級生の女の子が「するわけないだろ、バーカ」とののしったのです。女の子を「教育的指導」とばかりにどなりつけたい気持ちもありましたが、二女には「相手にしちゃダメ。ばかって言う子がばかなんだから」としか言えず、自分自身に腹立たしい思いがしました。こんな時、保護者はどのような態度をとるべきでしょうか。―――鳥取県、主婦(37)

【回答】教育評論家 尾木直樹 ●どうするのがいいのか、という迷いと悩みのように受けとめましたが、私は少し考え込んでしまいました。それには二つの理由があります。
 一つ目は、お母さんご自身が「小さなこと」と思っている、本当に小さな出来事に対して、どうしてこれほどまで激怒するのかということです。肝心の娘さんはどう受けとめているのでしょうか。そこが見えてこないせいかも知れませんが、ひょっとしたら娘さん本人よりも、お母さんの方が「バーカ」という言葉に、自分のプライドを深く傷つけられたのではないでしょうか。
 二つ目は、「小さなこと」であれば、どうして気楽に、それこそその場でやさしく諭すなりして、上級生の女の子を温かく「教育的指導」できなかったのかということです。
 子育ては、大変で社会的な大事業です。みんなで支え合い、励まし合いながら、地域や社会全体で営まれるものです。むろん、そのことを十分に理解しているからこそ、お母さんの悩みも大きいのでしょうが、それにしても、こんな「小さなこと」でそこまで悩まなければならない、私たち大人の地域での生活のあり方、信頼関係やコミュニケーションの薄さの方が、何だかつらく悲しくなりませんか。お母さんのイライラの根底には、きっとこのような今日の地域社会のありようへの憤りも潜んでいるように思えてなりません。
 となると、焦りは禁物、かえって逆効果です。「教育的指導」などと、力んでどなりつけては、元も子もありません。気楽に「そんなきつい言い方はダメよ」とか「下の子にはもっとやさしく励ますのがいいのよ。あなたならお姉ちゃんだし、きっとできるわよ」と、一人の「お母さん」として近所の子もリードし、しつけにかかわりたいものです。
53【相談】幼稚園の先生になりたい ◆社会人1年目。今の仕事に疑問を感じ、幼稚園の先生になりたいと思っています。しかし、年齢的に保育園は可能でも、幼稚園は難しいとしばしば言われます。自分の選択肢を広げるためにも専門学校を今年受験することに決めたのですが、悩んでいます。     ―――埼玉県、プログラマー、女性(23)
【回答】つくばこどもと教育相談センター運営委員・相談員 福島敬三  ●幼児教育を志して進もうとする姿に敬意を表します。若さを発揮し、ご努力下さい。 まず、年齢制限については、県によって一律ではないようですので、教育委員会に問い合わせて下さい。私のいる茨城県の教員採用試験は33歳までです。
 幼児の教育でしたら幼稚園だけでなく、保育園の保母も視野に入れておくといいでしょう。これからの進路については専門学校のほかに、短期大学で幼稚園教諭、保母の課程を持つところもありますので、学校案内などに当たってみて下さい。学費も短大の方が低い場合があります。単にこの資格を取るのみの学びではなく、幅広く教養を身につけて人間力を蓄え、その中で免許を取るのが、より豊かになると思うからです。
 この教育の仕事は、人間(教師)が人間(子ども)に触れての営みであるので、より豊かな教師の人間性が、現場では大きくものをいいます。学校での毎日の学びと同時に、そこで共に学び合う友人との触れ合い、その豊かな交流を通じて得るものも大きいし、またそこで自分の好きな趣味などに打ち込むのも人間形成に資するでしょう。
 また、これは授業の中でも取り上げられることだと思いますが、日本の幼児教育の草分け的存在である倉橋惣三の著作には是非当たってみて下さい。倉橋惣三選集全3巻(フレーベル館刊)の第3巻には、「育ての心」「就学前の教育」の二つの著作が収められています。その「育ての心」の序は「自ら育つものを育たせようとする心。それが育ての心である。世にこんな楽しいことがあろうか」と書いています。
 この倉橋に学んだ平井信義の「『育てる』ということ」(明治図書)も参考になります。授業で学んだことを基に、その中から何か一つの点を深く追求することも、豊かな学習をつくり出すでしょう。
52【相談】自閉傾向の子への対応 ◆3歳で保育園に入ってきた児童は最初、はっきり話すことができませんでした。5歳児になった今、特異行動が強くなってきており、会話も成り立ちません。家庭も決して望ましい環境ではなく、父親からの暴力が多いようです。近所のケアセンターでは「自閉的傾向とみられる」と診断されました。父親と何度も話し合いましたが、「うちの子は普通」というばかり。認めたくない気持ちはよく分かりますが、就学を控え、このままでは父親の「普通」という考えが今後を大きく変えてしまうような気がします。  ―――東京都、保育士、女性(28歳)
【回答】精神科医 和田秀樹 ●あなたのように責任感が強く、心から子どもを愛する保育士は、常に「私には何ができるか、何をしてあげられるか」ということで頭をいっぱいにしてしまうものです。それは養育者として素晴らしい態度ですが、今回のように深刻な事例では、次のようなことも考えてみる必要があると思います。
 (1)保育士としての「限界」(2)父親はどうして「自分の子は普通だ」と言いたがるのか−−。 これを考えないと対策が先に進まないので、これら2点についての私の見解を述べます。
(1)保育士としての「限界」について
 「自閉傾向」が見られるだけか、それとも本当に「自閉症」かということで、診断基準上も今後の対処の方法にも大きな違いがあります。母親とともに病院の専門医に相談することを勧めます。日中の子どもの行動を常に観察している保育者として、医師に詳細な説明をしてあげることは、あなたにしかできない仕事です。「自閉症」とはっきり診断されれば、父親の考え方も徐々に変わってくるはずです。しかし、それ以降の制度的なことは、保育士としての責務の範囲を越えてくるのではないかと思います。
(2)父親の気持ちについて
 あなたは驚くかもしれませんが、自閉症が先天的な病気として世間に認識され始めたのは、ここ十数年のことです。それまでは、「自閉症は親のせい」と当たり前に考えられてきました。さらに本当に自閉症であるとすれば、完治するケースは残念ながら現在のところまれであるといわざるを得ません。そのような社会的、医学的要因のために、多くの親は、わが子の「遅れ」を疑いつつも、それを認めず「普通学級」に入学させることを強く望むのです。そして、そこで破たんをきたして初めて「養護学級」などに編入するという段階を踏むことが多いのです。
 そのような複雑な気持ちに共感し、両親に「自閉症は親のせいではない」「病気と共存していく構えが大切」と伝えれば、かなり父親の心も開かれるのではないでしょうか?
51【相談】子ども同士のトラブル ◆息子と一緒に、校外活動でバスケットボールの練習をしている兄弟がいます。一緒に活動している女の子が、弟の方にだけ「来るな」などと意地悪を言うらしいのです。女の子はコーチの男性の子どものようで、当初は礼儀正しく見え、いい印象でした。コーチはボランティアなので気が引けますが、指導者でもあり、相談した方がいいのではとも思います。ところで、教育相談や学校カウンセラーに興味がありますが、これはこれ、という答えはないように思います。勉強して身についていくものではないのですか?       ―――東京都、自営業、女性(37)

【回答】恵泉女学園大教授 大日向雅美 ●子ども同士のけんかに、親は口を出すべきでないという考え方があります。それも一つの見識だろうと思いますが、一方で、子どもを適切に導くのも親や大人の役割でしょう。
 子どもは判断力や思考力において未成熟ですから、不適切な行動をとることは当然あります。友だちとのつきあいでは、相手の心の痛みがわからないため自分本位に振る舞ったり、相手の心を傷つけるような言動をとったりしてしまいます。「あの子は悪い子」というレッテルを張るのではなく、どの子でもあり得ることだという共通の認識を持ちながら、周囲の大人が温かく見守り、率直にたしなめることが必要です。
 相手がコーチの子どもということで、言い出しにくいでしょうが、コーチを信頼していれば率直に伝えることができると思います。また、指導者であれば、相談する気持ちをきっと理解してくれるのではないかと思います。
 さて、教育相談や学校カウンセラーに関心があるとのことですが、専門職として相談事業に携わるためには、大学や大学院の心理学科で学んで資格を取得する必要があります。しかし、その場合でも、学問としての知識だけでなく、人生経験や人柄なども大切な要件となります。そうした専門職でなくても、地域に暮らす大人が、子どもたちのためを思って行動することは、今の時代にとても求められています。豊かな人生経験をもとに活躍していただければと思います。
50【相談】一人で眠れない女の子 ◆小学2年の女子。夜寝る時に、「電気のところに猫がいる。怖い」と言って毎晩泣くようになりました。最初は主人と交代で添い寝しましたが、話がだんだん飛躍し、空想の世界になりました。主人は「注目されるのがうれしくて、無意識にそうなるのではないか。甘やかしているときりがない」と言います。普段は別に寝ていたのですが、しばらく一緒に寝ました。3歳下の弟がおり、「弟ばっかり」という気持ちがあるような気もします。       ―――埼玉県、パート、女性(30)

【回答】信州大教育学部付属教育実践総合センター助教授 今田里佳 ●普段はどのような性格の子ですか。感受性豊かな、やさしい子なのかしらと思いました。夏休みの中ごろに何か、怖い思いをしたとか、悲しい体験をしたとか、きっかけになるようなことはありませんでしたか。大人には大した事でないと思っても、子供には怖かったり悲しかったりする体験というものがあるものです。
 小学2年生くらいであれば、まだまだ現実と空想の世界の区別がうまくつけられず、その怖い体験や悲しい体験が、再び自分を襲うのではないかと不安になることも不思議ではありません。大人でさえ、そういう体験をした後に気持ちが不安定になってしまうことがあるのです。
 添い寝をした時は、安心して寝ることができたのでしょうか。大人でもそうですが、子供の場合は特に、不安になった時はやさしく守って安心させてくれる存在が必要です。少々幼くなってしまったような感じがするかも知れませんが、親はそれを否定して無理に不安を我慢させようとするよりは、十分に甘えさせ、それを必要としなくなるまで続ける方が良いと思います。
 添い寝をしながら、子の怖い、悲しい気持ちを十分に聞いてあげて、「怖い気持ちになっても、悲しい気持ちになっても構わないんだよ。お父さんやお母さんがいつでも守ってあげるよ」というメッセージを送り続けて欲しいと思います。それを繰り返しているうちに、子の方が親と一緒にいなくても大丈夫という気持ちになり、一人で眠れるようになると思います。
49【相談】しつけと性格 ◆例えば、落ち着きなく食事中に立ち歩いたり、何事もせかせかと動き回ったりする。これは性格なのか、それともしつけで直るものなのか。落ち着きのない子でもきちんとしつければ、じっと座って食べられるようになるのか。性格は子供の個性でなかなか直りませんが、しつけは直せるものが対象ですよね。両者をどう見極めればいいでしょうか。    ―――神奈川県、公務員、女性(29)

【回答】教育評論家 尾木直樹 ●しつけとは何でしょうか。朝起きたら服を着替える、トイレを済ませる、歯を磨く、あいさつをして朝食を食べる。これらはすべてしつけです。基本的生活習慣とも言われる領域です。子供の時期にこれらをきちんと確立することは極めて重要で、しつけの第一歩といえます。
 なぜなら、両親のものの見方、考え方(価値観)を日常生活を通して伝えることになるからです。「ダメ」で縛るのではなく、生活の文化を伝え、築こうと心がけて下さい。「○○しようね」「お母さんは○○が大好きよ」と。このようなかかわりの中で、生活力も人間力も社会力も安定して伸びていくのです。
 日常生活のスタイルが確立していくと、子供に自信を与えます。親と共に築き上げた家庭文化としての生活習慣は、子供の心身に変調が起きた場合でも、それらを鏡にして自己を相対化させてくれるからです。こうして自己を客観視し、自分の心を鍛えるためにも、しつけは欠くことができません。
 もう一つ、しつけで忘れてはならないことは、しっかり遊ばせることです。見落とされがちですが、気分転換に遊ぶ大人と違って、遊びそのものが子供にとっては生活のすべてであり、学びでもあり、生きる力を育てる土台だからです。子供は何でも「遊び化」させてしまう、遊びの天才です。その芽を伸ばしたいものです。
 一方、性格とは文字通り、おとなしかったり、粗暴であったりと、人格の特性を示します。生まれつきのものもありますが、多くは生得的なもので、自己教育力でのコントロールが可能です。新たなしつけでカバーすることができます。ですから「これは性格だからどうしようもない。これはしつけの領域だからしっかりとしつけなくては」とは
っきり区分けできるものではありません。また、区別すべきものでもないでしょう。
 たとえ落ち着きのない「性格」であったとしても、静然とすべき場面では、状況に合わせる力をつける必要があります。それは場面に応じてとるべき態度を判断させる「しつけ」の課題です。
 大切なことは、しつけには年齢や発達レベル、本人の性格などを的確に把握し、無理強いせず、成長への喜びとして受け入れられるような配慮が求められるということ。苦痛を与えたり虐待になったのでは、元も子もありません。親のわがままになってしまいます。
48【相談】友達ができない長男 ◆小3の長男は、小さいころから引っ込み思案で、人に話しかけることが苦手でした。小学校へ入っても仲良しがなかなかできず、1年生の終わりごろになってようやくできたらクラス替え。2年生の春にはまた「友達が欲しい」と泣いていました。3年生になっても、今のところ休み時間は独りで過ごしています。担任にその都度相談していますが、改善されません。本人が変わらなければならないのでしょうが、どのようにアドバイスしたらよいのか、教えてください。     ―――新潟県、公務員、女性(38)

【回答】信州大教育学部付属教育実践総合センター助教授 今田里佳 ●まだ小学3年生。特定の1人か2人の友達ができるというより、大勢でその時々に合わせて遊べ、一緒に時間を過ごせる子供はみんな「友達」、という時期ではないかと思います。学校の休み時間も、自ら仲間に入れてと行動を起こせば、自然と仲間に入っていけるような年ごろではないでしょうか。
 引っ込み思案で人に話しかけることが苦手ということですが、メールの内容だけでは、お子さんが特に何らかの対人関係を結ぶことに援助が必要な状態なのか、それとも何かきっかけがあれば変わっていけるのかを判断することはできません。学校だけでなく、近所や親類の子供(もしいればですが)との関係の中で遊んでいるときなど、お母さんから見て特に気になる点はあるのでしょうか?
 また、「友達がほしい」と泣いているということですが、お子さんは、どのような関係を持てる人を友達と感じ、そういう友達がほしいと考えているのでしょうか。具体的にどのような関係を持ちたいと考えているかによっても、友達作りの対策を立てることができるでしょうし、あなたからもアドバイスしやすくなると思います。
 前にも書きましたが、小学3年生ぐらいであれば、周りのお子さんは、特定の誰か1人と深い付き合いをするという友人関係を持つ時期とは思えません。もしもそのような友達をほしいと考えているのであれば、今の年齢ではかなり難しいかもしれません。 担任には、お子さんの学校での様子をよく聞いて、家でできることと学校で配慮してもらえることとを一緒に考えていくとよいでしょう。担任の先生と親がよい信頼関係を築くことは、子にとってよい人間関係を築くための見本のようなものでもあります。ぜひ相談してほしいと思います。
47【相談】相性の合わない友達 ◆小5の長男。友達関係はおおむね順調なようですが、同じクラスに相性の合わない男の子が一人います。4年生の後半から、その子に「邪魔だ」などと言われ、「学校に行きたくない」と言い出すことが多くなってきました。本人は無視しているようですが、相手は一向にやめる気配がないようです。実際、このことが原因で何度か学校も休ませました。先生に話をしようかと聞くと、本人は「自分で解決する」と言っています。このまま見守った方がいいでしょうか。       ―――埼玉県、会社員、男性(34)

【回答】 月刊教育誌「ニコラ」編集発行人 馬場章 ●どうするのが最善の策か、お悩みのようですね。小5という年齢を考えると、相手が長男に対して気に食わないことがある場合と、好意や関心を嫌われるような形でしか表現できない場合とが考えられます。いずれにしろ、長男には迷惑で、この状態を改善しないと学校に行きづらくもなります。ただ、「無視する」という対応は、相手の気分を害して事態を悪化させることはあっても、好転させることにはつながらないと思います。
 望まれる最もよい解決方法は、相手と仲良くなることではないでしょうか。そのためにはどうしたらいいか、という方向で考えてみてはどうでしょうか。その場合、長男に任せるか、それとも親が出て行くべきかで迷うと思いますが、長男が「自分で解決する」と言っているのですから、まずはその意思を尊重し、「どうして嫌がらせするのか」を相手に聞いてみるようアドバイスしてはどうでしょう。それで、相手の好意を表す不器用さによるのか、長男に非があるのかを判断してはどうでしょう。
 もし、それが相手の一方的な意地悪であれば、親が解決に乗り出した方がいいと思います。担任を信頼して間に入ってもらう方法もありますが、指導の不手際で一層辛い目に合う場合もありますのでよくお考え下さい。
 一昔前だと、親が直接介入することはよくありました。たとえば、下校時に長男が相手と一緒にいるところに偶然出会ったように振る舞い、「やあ、君が○○君か。いい子じゃないか。うちの子と仲良くしてやってくれよ。だけどね、うちの子をいじめたりしたら、おじさんはとても怖いぞ。よろしくな」というような声掛けをしたものです。これで大抵のいじめっ子はびびってやらなくなりました。参考にしてください。
46【相談】夢のない中学生 ◆学習塾の講師をしていますが、最近の中学生は将来の夢がないようです。そのため、間近に迫った高校入試に対しても意識が低い子が多いです。将来について、塾でも指導しなければなりませんが、それは第一に学校や家庭ですべきことなのではないでしょうか?こうなるのは、社会的にフリーターが多いのが影響しているのでしょうか?       ―――東京都、学習塾講師、女性(22)

【回答】 札幌自由が丘学園代表 亀貝一義  ●私事ですが、30年間高校に勤め、それ以降は塾を運営していました。今はその塾とフリースクールを運営しています。
 子供の意識は、やはり少しずつ変わっているようです。現実的な傾向が強くなっている、といったら当たっていると思います。つまり夢がない。今苦労をしても、結局幸せになるかどうか、全く分からないのだから、それなら今を幸せに過ごしたほうがいい、ということかも知れません。
 私は、塾であれ学校であれ、フリースクールであれ、少なくとも「教育」の仕事にかかわっている以上、子供たちに対して一定の責任を持たなければならないと思っています。その責任とは、子供と絶えず希望を語り合えるということです。これがなくなったら、子供への責任を果たすべき仕事からは離れるべきだと思っています。
 しかし、現実には、塾では極めて限られた時間と目的の中でしか触れ合いの機会がありませんから、どうしても「○○高、○○大学受験」しか共通のテーマがないのです。 だから、間近の高校入試への意識の高揚を求めるとしても、実際には点数とその範囲での合格の可能性しか話す余裕はありません。あなたの焦りも立場上の限られた範囲のことですから、わずかな触れ合いの中での「希望の共有」では、どうにもならないかもしれません。
 高校進学に関するテーマを掘り下げるのは、家庭と学校の課題です。割り切るしかないと思います。ただ、できれば、若いあなたが共通する話題で、高校進学を通して「自分は何ができるのか、何をしたいか」を、まずあなた自身を材料として語ることができれば、極めて大きな飛躍の契機を与えることができるかもしれません。
 そして、塾講師であっても教育の仕事の一端を担ったと自覚した時に、これを人生の仕事にしたいとあなたが思えたならば、それが最高の「果実」ですね。
45【相談】算数が苦手な小6女子 ◆うちの教室に通ってくる小学6年の女の子は、算数が苦手で、3年生の学習に戻ることもあります。頑張ってはいるものの考えるのが苦手らしく、説明を聞くのも面倒そうで、すぐに答えを聞き出そうとします。何とか自信を持ってほしいと、褒めて励ますのですが、心に響かないようです。前向きに頑張ろう、苦手なところを克服しようという気持ちにさせるにはどうしたらいいのでしょうか。  ―――長野県、教室指導、女性(30)

【回答】土屋医院院長 土屋守  ●この女子はまさに、現代日本の教育のあしき在り方の代表になってしまっています。無論、この子の責任ではありません。
 私は精神科医の前に13年間、高校教師をしていました。現在も、主宰するカウンセリングルームで受験、いじめ、不登校、中退など教育問題についての相談に応じ、著書やメディアで発言もしていますが、今まで数学と物理が好きだという子に出会ったことはありません。
 私は高校は受験校にいたので(心の病気で中退しましたが)、数学は嫌だったけれど頑張り、大学にも合格しました。しかし、ここまではこの子のように「数学は答えが大事」と思っていましたから、数学嫌いは直りませんでした。
 京都大学に進み、偶然が重なって森毅教授(当時)と親しい師弟関係になりました。森教授から「数学は出題に対し仮説を立て、それに沿って矛盾しない論理展開が出来ていれば、答えが180度違っていても、9割以上の得点が得られる」という京大受験の得点基準を聞かされて、数学嫌いから解放されました。
 しかし、その後始まった共通一次、センター試験では「数学は答え」になっています。この点に異議を唱えもせず、大学受験に関係した数学者たちは、重大な過ちを犯したわけです。数学者でもこのありさまですから、ましてこの年齢の子を「算数が好き」にさせるのは困難です。
 児童心理学の問題ではなく、あなたを慕っているのであれば、困難なことより、この子と一緒に「今好きな科目」を探し、その科目をもっともっと好きになるようにしてあげるのが、教育の要諦(ようてい)であることは、教育学者や心理学者のほとんどが一致するところです。
 精神科医の私に言わせれば、「人間は大なり小なり『快楽の法則』に従う。嫌なことより楽しいことから始めよう」ということになります
44【相談】長男の安易な考えに不安◆高3の長男は、ミーハーな生き方に染まりがちです。当初志望していた受験校からいつの間にか方向転換し、今の公立工業高校へ。大学も指定校推薦でようやく決まりました。給料はたくさん欲しい、楽をしたい、見栄を張りたい。息子の考え方にはあきれるばかりです。会話のキャッチボールも成立しません。大学に入っても遊んで暮らすだけではと思ったり、良い出会いがあって自分を見つければとも考えたり。長男をどう認めて受け止めてやればいいのか、悩む毎日です。       ―――山口県、女性(42)

【回答】 札幌自由が丘学園代表 亀貝一義  ●親や教師は、子供たちに対して受容と要求の両面を堅持しなければならない、と私は思います。子供を愛し、尊敬し続けるがゆえにです。そのことをまずご理解ください。
 あなたの悩みを読んで、十数年前の自分と重なるような感じでした。少々私的なことを記します。私の子供も高校受験の時、ほんのちょっと努力すればトップの高校に入れるのに、楽に受かる学校に入りました。大学も当初の志望校ではなく、楽に入れるところにしました。私もかなり厳しく要求しました。そんなことでは人生駄目だ、という意味を込めて。あなたの息子さんも、大学に入ったら親が期待するほどの努力はせず、楽しく過ごすのではないでしょうか。私の場合も全く同じです。会話のキャッチボールなどできませんでした。
 大学卒業の時、バブルの時期だったことが幸いしてそこそこの会社に入りましたが、3、4年して退職し、今度は外資系に勤めました。その時の入社試験の勉強は非常に頑張ったようです。今は首都圏で家庭を持っています。
 下の娘の時は「なるようになるさ」と考えて、そんなにがみがみ言わなかったのですが、ランクが高くない高校と専門学校を出て、いつつぶれるか分からないような企業に勤めている人と結婚しました。今は近くに住み、いつも交流して楽しく過ごしています。 私の知人はすごい教育パパとママで、3人の子供は最高の大学を出て、今世界をまたにかけて活躍しています。定年を迎えて暇になった親は、孫の顔を見たくても簡単に会えません。「あまり優秀な子供でない方が親は幸せなのでは」などと言っています。
 どうでしょうか。あなたの悩みは親みんなに共通のものです。そして、子供たちはそれぞれ自分の力で生きていきます。親の最低のノルマさえ満たせば、それ以外は子供の責任と割り切る必要があると思っています。以上のようなことを、私は、生徒の親たちが「子育てで失敗したのでは」などと嘆いている時に語るのです。人生っておもしろいものですね。
43【相談】勉強嫌いの小6 ◆小6の三女の成績のことで悩んでいます。ふだんは明るく活発で、運動部のキャプテンをしていますが、勉強、特に算数が嫌いなようで、宿題もほとんどやりません。授業でも手を挙げて発言することはなく、たまに当てられるとボソボソ話し、果ては黙りこくる始末。先生からは「もっと成績が良くていいはず」と言われています。来年は中学に入学し、高校受験が待っています。勉強が嫌いでも、せめて高校はと考えているのですが。    ―――沖縄県、自営業手伝い、女性(39)

【回答】 山田中学生問題研究所代表 山田暁生  ●三女には、こと勉強に関して、お母さんや姉妹から相当プレッシャーがかかっているように思います。お父さんや先生もそれに加わっているかもしれません。運動部のキャプテンとして立派にその任を果たしているのに、勉強、とりわけ算数となると拒否的態度まで示すというのでは、その子が本来持っている、学び取る力がほとんど引き出されていないように思えます。
 誰でもそうですが、自信が持てず確信のないことについて、周囲から答えを強いられると、当然声が小さくなります。「キャプテンなんかやっていても、入試では役に立たないのよ」「中学に入ったら、すぐ受験が来ちゃうのよ」「算数は入試のかぎなのよ。今から頑張らないと、お母さん心配で心配で……」と、不安がらせるような言葉で畳みかけていませんか。
 生きる元気を出すのに必要なのは「自信」と「希望」です。この二つを持つと、意欲はどんどん膨らんできます。いい加減にしてやめなさいと言っても、もっとやりたいと思うようになります。そのためには、焦らせるようなお母さんの言動は禁物です。
 私は35年間、中学で数学を教えてきました。算数の苦手な子に共通して言えるのは、問題を解いていく基礎的な道具である計算力に弱点があるということです。この道具が自由に使いこなせれば、面白いように正解が出せるようになり、「もっとやりたい」という気持ちがわいてきます。やさしい計算問題から手をつけて「私にもできることがたくさんある」と気づかせ、ほめて励ましてあげて下さい。一歩一歩の成功感で、きっと勉強面でも元気が出てきます。
42【相談】覚えることが苦手な息子◆中学1年の長男は、漢字や英語などの「覚える」勉強が苦手です。問題集をやらせたり、夫婦で勉強を見てやったり、個別指導の塾に通わせたり、親として努力してきたつもりですが、あまり効果がありません。本人もやる気がないわけではないようですが、危機感がなく、放っておくと本当に何もしません。嫌いなものを無理にやらせるより、手先が器用なので「手に職をつける」ことを考えた方が本人のためかとも思うのですが、高校は出て欲しいとも思います。      ―――愛知県、パートの女性(38)

【回答】精神科医 和田秀樹 ●確かに記憶がうまくいかないことは、テストの点を悪いものにして子供の自信を奪ったり、勉強嫌いのきっかけになったりするようです。
 かくいう私は、子供のころから丸暗記は苦手で、人名や地名、年号の暗記が苦手だったので、共通一次試験でも、なるべく暗記の少なくて済む地理と政治経済を選択した記憶があります。また、関西の中学受験の際には、東京の私立中のように社会科が受験科目でなくて助かったのをよく覚えています。
 実際、学年が上がるほど、単純暗記のウエートは低くなるので、苦手な覚えものを無理にやらせるより、理解や練習によって記憶をあまりせずに済む、数学のような科目をさせることで、何とか勉強への自信を保たせるという方法もあります。 もう一つの方法として、記憶の仕方を多少工夫してみるという手もあります。
 記憶には、入力と貯蔵と出力の3段階があると考えられています。入力をよくするためには理解と注意が必要とされています。漢字や英単語を覚える際にも、語源は何だなど理解が加わる形で覚えると、多少覚えやすくなる可能性があります。
 注意のレベルを上げるには、大事なものだけを親がピックアップして、これだけは覚えろという形で集中させる方法もあるでしょう。注意を高める最もよい方法は、興味を持たせることです。英単語や漢字が好きになってくれればいいのですが、親としては「これができるようになれば、こんないいことがある」と伝える程度でしょうか。
 貯蔵の段階のテクニックは、ただ復習するしかありません。物覚えが悪いとあきらめるのではなく、いろいろなことをやらせるより、他人以上に復習させるのが有効です。 出力についてはそのトレーニングしかありません。問題集を買うのは賢明ですが、家庭で小テストをやってあげるという手があります。やれるだけのことをやってみて、だめなら記憶以外の勉強でも大丈夫と伝えるのが現実的ではないでしょうか。
41【相談】兄弟げんかにどう対応◆高校2年から小学3年まで5人の息子がいます。どの子も基本的には優しくて親切ですが、兄弟げんかは日常茶飯事です。最近はそれぞれ悩みやストレスを持ち、行き場のないストレスを家で発散するようになりました。特に、長男は弟たちを大声でどなり、なじります。弟たちは対等にけんかできず、悔しさを物にぶつけたり、泣き叫んだりで、その激しさは放って置けないほどです。そんなことの繰り返しで、私自身ストレスがたまっています。       ―――神奈川県、パートの女性(41)

【回答】恵泉女学園大教授 大日向雅美  ●男の子が5人いれば、けんかも絶えないでしょう。子供のころは、感情や意見を互いにぶつけ合うのが当たり前。けんかができるような関係が大切と言っても過言ではありません。遠慮がいらないからこそ率直にぶつかりあい、時には痛い思いや悔しい経験をしながら、人との付き合い方や思いやりを学び合うことができるのではないでしょうか。激しくやりあっても、子供のけんかは大人になって振り返ると懐かしく、大事な思い出になるものです。
 後から互いに笑って振り返ることができるようなけんかにするには、親が心がけなければならない点がいくつかあります。一つは、親が不必要に干渉したり裁いたりしないことです。どちらが良いか悪いかを判定して、裁判官めいた介入をしがちですが、兄弟げんかはどちらに是非があるか、子供同士よく分かっているものです。やりきれない感情を発散しているだけですから、子供のけんかで終わっていれば、表面的には激しいけんかであってもしこりを残さずに済みます。
 どちらか一方をしかれば、しかられた方には自分だけしかられたという理不尽な思いが残りますし、味方をしてもらった子の方も、相手に対し後味の悪さを残しかねません。むしろ、ころ合いを見計らって「もうやめなさい」と一喝し、あとはおやつの時間にでもしたらいかがでしょうか。
 親として心がけたいもう一点は、ほかの兄弟のいないところで、双方をしっかりと慰めることです。長男には「このごろ疲れているみたいだけど大丈夫?」、弟たちには「お兄ちゃんがイライラしていてごめんね」など。同時に相手の気持ちを代弁してあげることも大切でしょう。兄も本当は弟たちを大事に思っていて、ストレス発散の対象にしてしまったのを後悔しているはずですし、弟たちも兄を頼りにしていることは間違いないからです。
 けんかしながらも、相手を思いやる気持ちを失わせないよう、親は良い意味で通訳の役割を果たしていく必要があります。

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